RESEARCH研究内容

“化学結合力や場の力の絶妙なバランスで創り出す、新しい構造と機能”

1. 粘土が出会いのチャンスを広げる

化学反応を加速するためには通常、「反応系の温度を上げる」「反応物質の濃度を上げる」または「触媒を導入する」必要があります。これに対し私たちは、「反応基質を表面吸着させる」という方法で化学反応の加速に成功しました。反応基質の電荷分布が表面で変化するために、反応の頻度因子が増幅し、反応効率が増大するというメカニズムです。この時表面の有無で活性化エネルギーにほとんど差がなかったので、触媒反応ではないと言えます。従来法とは違う、第4の化学反応加速法として、「表面利用」の方法を確立します。

2. Adsorchromism(吸着クロミズム)

表面吸着による色素分子の電子状態の変化によって誘発されるクロミズムを「吸着クロミズム」と名付けました。表面吸着による分子の光化学特性の変化は、プロトン化・凝集・分子内構造の変化などによって引き起こされます。特に共平面化や分子運動の減少などを含む分子内構造変化による光化学特性変化の関連は、分子内の電荷分布にまで踏み込んだ考察が必要となり、興味深い研究対象と言えます。

3. 層状アルミノシリケートからなるフィルムの特性と応用

層状アルミノシリケートは有機ポリマーフィルムに添加することでそのガスバリア性を高めることに使われてきました。私たちは、層状アルミノシリケート自身にも製膜性があることに着目し、層状アルミノシリケートのみから成るフィルムのガス透過性を分析しました。この結果、粒径が2μm程度の層状アルミノシリケートで作られた膜では拡散によるガス透過であるのに対し、粒径が20 nm程度のもので作られた膜ではキャピラリーフローによるガス透過であり、ガス透過度が比較的高いことが分かりました。キャピラリーフロータイプによるガス透過膜と言えば、微細な孔の施されたポリ袋がこれに該当します。酸素等のガスを完全には遮断せず、低濃度酸素状態を作り出すことが青果物の保存に適しており、包装材として利用されています。本研究ではこれに着想を得て、粒径の小さい層状アルミノシリケートによる膜を青果物の表面で形成し、発生するガスや見た目の変化の違いを観察しています。

Projects

1. 山内ERATO物質空間テクトニクスプロジェクト

導電性ナノ多孔体は、「第二世代無機多孔体」として今世界の材料化学の分野で特別な注目を集めています。導電性ナノ多孔体のうち特に金属ナノ多孔体は、制御された微細な空間(細孔)を持つナノスケールの無機固体金属でありながら電気伝導性も有する無機単結晶構造体です。これは、代表的な多孔体であるゼオライトやMOF/PCP、または、第一世代無機多孔体のメソポーラスシリカと比較して、高い電気伝導性、骨格の結晶性や組成・細孔構造の多様性などの観点で圧倒的な優位性があります。これらの組成を炭素、硫化物、リン化物、遷移金属酸化物などへと展開し、ナノサイズからメソサイズの範囲で高度に集積化(ハイブリッド化)させることで異種材料の相乗的融合が生まれ、新しい電子・物理化学的な性質の発現が期待されます。このような背景の下、本プロジェクトでは、結晶中の「ナノ空間」と、それらが高度に集積化された「ハイブリッド空間」の完全制御に向けた合成プラットフォームを確立することを目指します。
機能集積テクトン:朝倉裕介(名古屋大学)
MIテクトン
ナノ物性計測テクトン:中川鉄馬(早稲田大学)
界面制御テクトン:江口美陽(早稲田大学)
ナノ構造制御テクトン:Joel Henzie(物質・材料研究機構)
新規材料探索グループ:Jonathan Hill(物質・材料研究機構)

2. TOYOTA自動車との共同研究

3. ナトリウム電池開発

革新的GX技術創出事業(チーム型)
領域:蓄電池
資源制約フリーなナトリウムイオン電池の開発