層状アルミノシリケートは有機ポリマーフィルムに添加することでそのガスバリア性を高めることに使われてきました。私たちは、層状アルミノシリケート自身にも製膜性があることに着目し、層状アルミノシリケートのみから成るフィルムのガス透過性を分析しました。この結果、粒径が2μm程度の層状アルミノシリケートで作られた膜では拡散によるガス透過であるのに対し、粒径が20 nm程度のもので作られた膜ではキャピラリーフローによるガス透過であり、ガス透過度が比較的高いことが分かりました。キャピラリーフロータイプによるガス透過膜と言えば、微細な孔の施されたポリ袋がこれに該当します。酸素等のガスを完全には遮断せず、低濃度酸素状態を作り出すことが青果物の保存に適しており、包装材として利用されています。本研究ではこれに着想を得て、粒径の小さい層状アルミノシリケートによる膜を青果物の表面で形成し、発生するガスや見た目の変化の違いを観察しています。
- ⚫︎ この内容はJ. Mater. Chem. A, 2022で報告されました。
- ⚫︎ 物質・材料研究機構からプレスリリースされました。
物質・材料研究機構:粘土でリンゴの鮮度を保つ ~未来の食糧危機に備える長期保存技術~
※ 本研究は、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 メソスケール物質化学グループの江口美陽主任研究員を中心とし、クイーンズランド大学、および国立台湾大学のメンバーからなる国際共同研究チームで行われました。また、本研究の一部は、 JST-ERATO山内物質空間テクトニクスプロジェクトの支援の下で行われました。